http://www.moj.go.jp/kokusai/kokusai03_00011.html





森法務大臣コメント(2)(カルロス・ゴーン被告人関係)ー令和2年1月9日(木)

    昨日のカルロス・ゴーン被告人の会見においては,ゴーン被告人から,我が国の刑事司法制度に対し,様々な批判的な主張がなされた。

    その多くが,抽象的なものや,趣旨が判然としないもの,根拠を伴わないものにすぎないものであったが,広く世界に中継されるなどしたものであり,世界中に誤った認識を拡散させかねないものであることから,正しい理解を得るために,昨日申し上げた点に加え,一般論としてではあるが,何点か,冒頭において指摘しておきたい。
    なお,個別具体的な事件における捜査・公判活動は,検察当局の責任と権限において行われるべき事柄であることから,法務大臣として,それらに関する主張に対し,事実関係や所感を述べるものでないことを申し添える。

 
    この他にも,ゴーン被告人は,自身の刑事手続に関して,るる主張を繰り広げていたが,いずれにしても,これらの主張によって,ゴーン被告人の国外逃亡が何ら正当化されるものではない。
    また,個別事件に関する主張があるのであれば,具体的な証拠とともに,我が国の法廷において主張すればよいのであり,ゴーン被告人においては,我が国の公正な刑事司法手続の中で主張を尽くし,公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む。










http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/20200105.html



森法務大臣コメント(カルロス・ゴーン被告人関係 −ウォールストリートジャーナル紙記事への反論寄稿)−令和2年1月15日(水)
※令和2年1月2日付け及び同月9日付けのウォールストリートジャーナル紙の記事に対して,森法務大臣から反論文を寄稿し,その内容が本月14日付けウォールストリートジャーナル紙ウェブ版に掲載されています。
  1月9日付社説「Ghosn, Baby, Ghosn」及び1月2日付「The Carlos Ghosn Experience」は,日本の刑事司法制度を正確に踏まえていない。
  日本では,逮捕するためには,いくつかの民主主義国と違って,現行犯逮捕の場合を除き,裁判官の許可が必要とされる。このうち,検察官は十分な証拠があり,重要な事件に限って起訴をする。刑事裁判での当事者になること自体が被疑者の負担を増すからだ。検察官が起訴する事件の割合は37%である。
「有罪率が99.3%」は,起訴に至った件数を分母にした有罪判決者数の率であって,事件を犯した者の総数を分母にしていないので,それは高い数字にならざるを得ない。
  だから,起訴すべきか否かの判断をするための捜査や取調べは,おのずと精確になる。しかし,不当な取調べによって自白が追及されないように,被疑者には黙秘権があり,弁護士と立会人なしに接見をする権利がある。弁護士同席でないことで,不当な取調べが行われないことを検証できるように,取調べの録音,ビデオ撮りが行われている。そもそも,日本国憲法は,強制された自白を証拠とすること,自白のみにより有罪とすることを禁じている。
  起訴した後,裁判開始前でも,証拠隠滅や逃亡のおそれがなければ,保釈が認められ得,配偶者と会うことも過ごすこともできる。検察当局によると,ゴーンの妻キャロルについては,最近,ゴーン被告の事件関係者とやり取りをしたことを偽証した疑いで裁判官から逮捕状が発付された。
 日本の刑事訴訟は,複数の過程を経ながら,そこには裁判官によるチェックも含めて慎重に進められる構造になっており,その間の被疑者・被告人の権利にも細心の注意を払っている。
 また,日本のコーポレート・ガバナンスが進展していることは,最近の複数のウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事でも報じられている。半世紀も前に使われた「日本株式会社」を,埃を払って取り出して,政府と企業の陰謀を説くことに説得力はない。

法務大臣 森まさこ